書籍~猫鳴り~

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2012/04/30(月)01:56
~ブログ開設から807日 更新443回~

先の金曜日に前期の実地研修1回目を終えてきました。
色々と思うことはありましたが、それはまた別の記事ででも。
段々と日中も暑くなってきたね。
こんばんは、朔です。

今回は長くなってしまったので、以下の追記からどうぞ。
※否定的な意見、ネタバレが若干あります。
*

猫鳴り

かなり久しぶりな気もする書籍カテゴリ。
今でも本はそこそこ読んでいるものの、感想を字に起こす暇がないのが結構残念だったりするのです。
そんなこんなで、今回紹介するのは沼田まほかるさんの『猫鳴り』です。

『猫鳴り』は全3部構成となっており、それぞれの章で主人公視点が異なります。
1章では流産してしまったばかりの婦人、信枝。
2章では言いようのない苛立ちと焦燥感のような『ブラックホール』に囚われている中学生、行雄。
3章では妻である信枝に先立たれた藤治。
そして各章を繋ぐのが、猫のモン。

物語は、流産したばかりの信枝が家の近所でモンを見つけるところから始まります。
この時点でのモンは、生まれたばかりで目が開いたばかりの仔猫。
誰かに捨てられたのであろうその猫は、母親か、または助けかを求めて激しく鳴いています。
当然、信枝はこの猫を拾って甲斐甲斐しく育てるのだろうと、この時点ではそう思っていました。

一度は仔猫を拾って帰った信枝ですが、その後2度に渡って仔猫を捨ててしまいます。
理由は、生まれてこれなかった形のない胎児が、その仔猫に重なったから。
彼女は雨が降る森の中にその仔猫を捨てることで、亡くなった胎児を重ねて葬ろうとしたのです。
私には理解できませんが、子を流した母親の情念、心情というものには計り知れないところがありますね。

そんなわけでモンと名付けられる仔猫は、都合3度も捨てられることとなります。
正直、途中で読むのを止めようかと何度も考えました。
というのも、愛猫家には読み進めるのが辛すぎるのです。

2度目に捨てられた際、モンは這うようにして信枝の元に帰ってきますが、その際彼女は夫の藤治に「もっと遠くへ捨ててきて」などと言い放つのです。
あとがきじゃないけれど、思わず「信枝ぇぇぇ!!」なんて口走ったのは内緒。
最終的には、藤治が捨てられたモンを探して保護し、そのまま彼らの家に落ち着くこととなります。

2章ではいきなり場面転換し、主人公が中学生の行雄に。
この中学生は本当にどういう思考回路してるんだろう、って思うくらい考え方が恐ろしいのですが、とある理由から父親が拾ってきた捨て猫「ペンギン」との生活を通して、徐々に心の平穏を取り戻していきます。
が、こちらの猫は病で死んでしまい、不幸にしてその亡骸をモンが攫っていってしまい・・・

3章は1章の十数年後。
藤治は妻の信枝に先立たれた後、成猫となったモンと一緒に老後をのんびり過ごしていました。
モンは縄張りに他の猫を寄せ付けないほどの威厳をもった成猫に成長します。
しかし1年、また1年と年を重ねるごとに、老いがモンをゆっくりと死へ誘っていきます。
最期を迎えるモンとそれを見届ける藤治の生活が、この物語の最終章となります。




感想

賛否で言えば私は否の方です。
文体はどこか遠まわしだったり比喩的だったりで回りくどく、しかもセンテンスが長い。
ともすれば幻想的とも取れるような細かい描写が特徴的ですが、モンの最期にスポットを当てた3章以外はもっと簡潔で良かったと思います。

上記の理由から物語の全体像が掴みにくく、非常に朧気なものとなってしまいました。
特にモンを最初に捨てた少女とその母親、2章の主人公のくだりは別に無くてもよかったんじゃないかしら。
例えば若い獣医が実は2章の主人公で、少女と結婚した未来の姿でした、なんて伏線でも貼らない限りは。
匂わせたり煽ったりという部分に関しては巧いですが、どうにも著者の言いたいこと、着地点が見えない印象を持ちました。

反面、猫の行動や飼い猫の特徴などは非常に上手く表現していると思います。
また猫を最後まで飼った人間には訴えかけるものがあったし、実際私も3章後半は泣きっぱなしでした。
ただし、それが著者の技量によるものかといえばそれは断言できないし、死に逝くモンの様子に「うちの子はこうだったなぁ」なんて思い出補正が掛かったことによる感動の方が大きかったような気はするのです。

個人的な意見として、1章→3章なら暗いながらもスッキリと読めたのかな、と。
2章の存在意義がどうにも見いだせなかった。
各章の主人公にはそれぞれ心の内に昏いものがあって、という内容なら別に猫は関係ないし、わざわざ絡めたにも関わらず猫が決定的な主軸として機能していなかったように思うのです。
モンを捨てた少女&母親+少年+父親の印象が率直に不愉快だったのも評価として大きいかも。

繰り返しになりますが、1と3だけで余計なことをしなければ普通に感動のヒストリーで良かったと思います。
3章は何だかんだ言いつつよく出来ていたしね。
ただし、物語全体にかかる暗澹とした雰囲気と作風は、あんまり私には馴染まなかったです。
暗い話は大好物なのに、肌に合わなかったのが残念でした。

最後にタイトルの猫鳴り。
これは猫が甘えたときにのどをぐるぐる・ごろごろ鳴らす様子を藤治が表現したものです。
この表現は、すごく好き。
どこか含みのある言葉ですし、あの独特の行為にぴったり当てはまっているように思えるから。



というわけで『猫鳴り』でした。
いつもは「是非ご一読を」なんて言葉で締めることが多いですが、これに限ってはお勧めできません。
・・・こういう書き方をすると逆に気になるという方もいらっしゃるのかな。
出来の良し悪しではなく、好き嫌いによるものが大きい作品ですので、人によっては名作と感じることもあるのかもです。
ではでは、この辺で。
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